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和牛の育種改良(素人ブリーダーの私見)-第4回- |
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2014年3月25日
4、血統の力、相性の力 ②
私は、茂重波×安福×安光という交配を、自分の独自の才覚と思いましたが・・・
しかし、その後、各地の種雄牛のことを学び、全国の農家のみなさんの話を聞くにつれ、この交配はすでに各地の先輩が行ってきた交配と同じパターンだと分かってきました。
昭和40年代後半、長崎の壱岐に肉質の良さで一世を風靡した「幸久」という種雄牛がいました。血統は、安美土井×茂金波(茂福の息牛)×光広波(茂福の息牛)×母方さちえ(茂福の娘牛)で、茂重安福とは父方と母方を逆にした、安美土井(田尻の近交牛)と茂金系(茂福の近交牛)の近親交配同士の交配です。
ときどき、素晴らしい枝肉の血統に顔を出す「安福栄」も安福(安美土井の息娘牛交配)×乙社6(茂金波の息牛)×友田の8(茂金波の息牛)と、同類の交配です。
また、安福と茂金波系との交配は、抜群の相性だということも分かってきました。
茂重安福を一番早い時期から使っていただいた、一貫肥育の河合さんは、長野県から「亀吉(茂金波の息牛)」という種雄牛の娘牛を導入していました。「亀吉」は、長野県でも知っている人がほとんどいないというマイナーな種雄牛ですが、この娘牛に安福を交配した産子の枝肉は、すべて大当たり!! 河合さんは、当時、困難になっていた経営を立派に立て直し、優秀な経営にしました。
他ではまったく亀吉の話を聞かないので、亀吉に特別の力があったとは思えず、茂金波の息牛として安福との相性が良かったのだと思います。
また、安福が全盛だった時、県の畜産関係者は、安福×茂富士(茂金波の息牛)×新月(岡山)と継続してきた岐阜牛系統固定推進事業の成果だと説明していました。
これに対し私は、「ただ、安福という超能力の種雄牛が運よく岐阜県に来ただけではないか。」と反発していました。
しかし、今では、茂金波の息牛の「茂富士」を安福に先立って供用していたからこそ、安福があのように活躍できたのだと思います。
安福と茂金波の抜群の相性の内容は、小ザシでモモにまでサシが入り、肉色が明るいことです。安福はそのほかに、第7糸桜や平茂勝(安福娘牛に交配)など、比較的遠い血縁に対し、広く相性の良さを示しました。
このような血統の力、相性の良さを活かした交配の例はたくさんあります。
私たちの先輩が、すぐれた牛を選抜し、相性を研究し、どうしたら改良できるかと考え、交配を重ねてきたことを教えられました。
(つづく)
A5ファーム 日下部俊雄
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