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数面麻子のコラム
第26話:寄生虫の話㉓

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2014年3月8日

 これまで放牧された牛さんの間で寄生が多くみられるピロプラズマについてお話してきましたが、今回も同じく放牧牛さんの間で多くみられる寄生虫を紹介したいと思います。皆さんは肝蛭の名前はよく耳にしていると思います。うちの牛さん達にはちゃんと駆虫薬をあげているよ、という農家さんも多いのではないでしょうか。その肝蛭と同じ吸虫類である膵蛭をご存知でしょうか?
 膵蛭はその名の通り、牛さんの膵臓の膵間に寄生して重症の場合は膵炎を引き起こす寄生虫です。本来は東アジアや南米のブラジルで知られていたようですが、家畜の移動に伴い世界的に広がっていきました。膵蛭は虫卵の形で牛さんの糞便とともに排出されます。外界に出た虫卵はカタツムリに摂取され、カタツムリの体内で約250日から1年という長い年月をかけて増殖し、スポロシストという形まで成長します。スポロシストはカタツムリの呼吸口から排出されて粘球と呼ばれる形で草に付着し、今度はササキリ(キリギリスの仲間)に摂取されます。ササキリの中でスポロシストはメタセルカリアと呼ばれる寄生体となり、牛さんが草と一緒にこのササキリを摂取することで膵蛭はやっと牛さんの体の中に入り込むことができます。

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