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第25話:寄生虫の話㉒ |
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2014年3月1日
バベシアとタイレリアの感染症状は貧血であると前回のコラムでお話しましたが、症状がより重いのはバベシアの方です。特に法定伝染病に指定されている
B. bigeminaやB. bovisは昔、沖縄で問題となっていました。B. bigemina は40~42度の稽留熱、貧血、黄疸、血色素尿を引き起こし、急性のものでは罹患牛の50~90%が数日以内に死亡する場合もあります。B. bovis は上記の症状に加え、流涎、興奮、麻痺などの神経症状を伴うことが特徴です。これらは、B. bigeminaはダニ熱、B. bovis は脳性バベシア症などと呼ばれ、畜産に大きな被害をもたらしてきました。
B. bigeminaやB. bovisを媒介するのは当時沖縄の八重山で生息していたオウシマダニでした。八重山ではバベシア症が蔓延していたため、八重山から牛を移動する際には、「この牛はダニの駆除済」という証明書を家畜保健衛生所からもらわないと移動できなかっため、農家さんには負担となっていたようです。そこで、沖縄県と農家さんはオウシマダニの撲滅のため徹底的に取り組みました。空から駆虫薬をまいたり、牛に1頭1頭に駆虫薬をかけたりと費用と人手を費やし、28年間かけてとうとうダニの撲滅に成功したそうです。ちなみに、八重山にはオウシマダニの撲滅を記念した石碑があります。

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