2014年2月25日 -農場HACCPの現状と今後の方向性- 私は、平成8年に農場HACCPを知り、それから養鶏、養豚、養牛と実際に構築させていただく機会に恵まれ、現在はこの農場HACCPについて中央での各委員会や専門書や教本の執筆、東京や各県での講習会の講師などをやってきました。その中で、この2~3年で急速にこの農場HACCPに対し、農場関係者の関心が高くなってきていることを痛感しています。その動機は、やはり畜産物流通のグローバル化です。食肉処理場や食肉流通業者が先を競うように、ISO22000など国際基準を取得してきており、対米、対中、対シンガポールなどを見据えた衛生レベルの整備をしています。その中で、食肉流通業者が次に要求してくるのが、その原材料となる農場の牛(生体)の衛生レベルアップです。食の安全性は、万国共通の目的であり、むしろ海外の方がその安全性に対し対価を払うという消費者の意識があります。例えば中国の富裕層の人々は、安全な日本産の高額な米を好む傾向があります。今後、国際競争が激化してくると、生産コストで勝負が難しい日本産は、安全性で勝負するしかないのかもしれません。 認証農場として農場HACCPを構築するまでは、管理獣医師、コンサルタント獣医師、各県の畜産協会や家畜保健衛生所、薬品会社等で、全面的にお手伝いしていきます。実際には、農場毎にHACCPアドバイザーを含んだHACCPチームを作って、月1~2回、2時間程度の構築のための作業を行います。早い農場だと、約1年半足らずで認証農場まで到達しています。 現在、国内の肉用牛分野で承認されているのは認証農場が2件、推進農場(認証農場にはまだ到達していないが、基本的なHACCP事項はある農場)が10件あります。ちなみに養豚は認証農場が18件、推進農場が51件であり、肉用牛農場は他の家畜に比べると少ない状況です。しかし、まだ承認されていない農場で、現在、取りかかっている肉用牛農場は、多く見られます。 農場HACCPは認証取得のみを目的とするとなかなか続きません。実際に農場にHACCPを入れた農場主の皆さんが痛感されるのが、事故率が減り、生産性が上がった、防疫水準があがった、従業員の教育になった、みんなとのコミュニケーションがとれるようになったと言われます。記録や手順どおりに作業をやるなど、少々面倒な事もありますが、農場にとってプラスになることが多いと思います。 最後に、一つだけ付け加えさせてください。 「絶対に、国際競争に打ち勝つような肉牛、作りましょう!」。 6回のコラム読んでいただきまして。ありがとう、ございました!! 執筆者:九州獣医師HACCP研究会 事務局長 川邊久浩 前の記事 HACCP(ハッセップ)って何?(第5回) | 次の記事 和牛の育種改良(素人ブリーダーの私見)-第1回- |