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池田哲平のコラム
牛の解剖:生殖器(まとめ)

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2014年2月21日

 長きにわたって生殖器の解剖、そして生殖器の病気を見てきましたが、今回で終了になります。産業動物という位置づけの牛さんでは、繁殖をいかに効率よく行っていくかがカギになるので、その中心となる生殖器はとても重要な器官になります。
 とは言っても、本交(雌雄が直接交配を行う事)をほとんど行わず、人工授精や受精卵移植がほとんどである現代型畜産の場合、病気やその治療対象となるのはほとんどが雌の生殖器です。繁殖に関わる卵巣疾患や子宮疾患は、それこそ世界中の研究者・畜産関係者の方々があらゆる手を尽くして治療をしたり繁殖プログラムを開発したりしていますので、ここでは触れませんでしたが、雌の病気として取り上げた膣脱・子宮脱・子宮捻転の3つは、頻発はしないけれど緊急性が高く、命にかかわることもあるという点から是非取り上げておきたいと思いました。

 雄の生殖器は、去勢時にその構造・解剖を考えることはあっても、種雄牛を扱っている方でもない限り、なかなか普段の管理や診療で気に掛けることはないかもしれません。むしろ、陰茎や包皮は生殖器としてではなく、下部尿路として尿石症などの疾病に対して気を付けているという牛飼いさんが多いのではないでしょうか?尿石症に関しては泌尿器のところで色々書いていますので、是非またご覧になってください。
 また、去勢に関して、最近は伏見獣医師が開発した捻転去勢ツールが、か・な・り、いい感じです!牛さん・牛飼いさん・獣医師、すべてにメリットが大きいです。今回の一連のコラムの中で紹介した“陰嚢炎”(化膿性肉芽腫)などの術後疾病が起こるリスクも既存の手法に比べて低いです。まだの方は、是非お試しください!

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