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池田哲平のコラム
牛の解剖143:雌性生殖器の病気(3)―子宮捻転 失敗談…(つづき) ―

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2014年2月14日

 それから1時間程した後、先ほどの農家さんから電話が来ました。

 「子牛がまだ出てこなくて、何か様子がおかしいぞ」

 すぐに駆けつけて診てみると、先ほどの一次破水直前の状態からほとんど進展がありませんでした。おかしいと思い外陰部から手を入れて内診してみると、かすかにですが膣壁にシワというかヒダの様なものが触れました。

 そう、子宮捻転が完全には元に戻っていなかったのです。少し直った隙間から尿膜が出てきて安心してしまった私の完全なる見落としでした……

 そこからすぐに再度整復を試みたのですが、母牛の努責が非常に強く、手を入れるだけでどんどん押し返してくるほどでした。ちょうどその頃、松本獣医師と伏見獣医師がヘルプで駆けつけてくれました。状況を判断して、すぐに帝王切開(正確には、子宮は切開せず開腹による整復)を行うことにしました。

 結果として、腹腔内で無事に捻転を整復でき経膣分娩できたのですが、この時ばかりは本当に自分の判断が悪く、反省しました……。これを機に、子宮捻転の時は必ず母牛が分娩するのを責任もって確認する、もしくは介助分娩を行うようにしました。

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