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池田哲平のコラム
牛の解剖142:雌性生殖器の病気(3)―子宮捻転 失敗談… ―

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2014年2月7日

 子宮捻転に関しては、わたくし一つ大きく失敗した経験があります…

 農家さんからの電話での稟告は、「予定日を数日過ぎた母牛が尻尾を上げていきんでいて分娩みたいなんだけど、子牛が出てこない」というものでした。当然すぐに子宮捻転の可能性が頭によぎりました。

 急いで駆け付けて診てみると、案の定、子宮捻転でした。右(時計回り)に120‐180度くらい捻じれていて、まさに教科書で見たような膣壁の襞が目視と触診で確認できました。

 農家さんとも相談し、とりあえず用手法で整復を試みることに。右に捻じれていたので、右手をいれて子宮頸管を掴み、右手を内側に捻じる様にすると、子宮頸管は左に捻じりが戻されていきました(人は内側に捻じる方が力が入りやすいので、左に捻じれていた場合は左手で右側に戻す方がやり易いケースが多い)。

 すると、子宮頸管に隙間ができて、中から尿膜が出てきて頸管をどんどん拡張させていきました。尿膜は順調に拡張して出てきて、通常の一次破水が起こる直前くらいにまでなりました。

 農家さんとは「これくらい尿膜が出てくればもう大丈夫ですね」と話をし、分娩には慣れた農家さんだったので後の娩出や介助はお願いして、自分は次の診療に向かいました。

 しかし、この判断が後々の悪い展開を招くことになってしまったのでした……
(つづく)

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