2014年2月1日 全国的に感染が認められているクリプトスポリジウムは特に1ヶ月齢以下の子牛さんに多く発生します。生後間もない子牛さんに次々と感染し約4日間の潜伏期の後、激しい下痢を引き起こします。2ヶ月齢以上になると感染しにくくなり、たとえ感染してしまったとしても下痢症状はほとんど見られなくなります。そんなクリプトスポリジウムに対する治療薬ですが、実は今のところ有効な治療薬がありません。そのため他の牛さんへの感染を防ぐために発症した子牛さんを隔離する、敷き藁や糞を堆肥にする際の熱でオーシストを死滅させる、熱い蒸気で消毒するなど畜舎を清潔にして環境中のクリプトスポリジウムを減らし、病気が蔓延しないようにすることが大切です。 また汚染された畜舎からの排水は、人のクリプトスポリジウム症の原因のひとつになることもあります。患者や感染動物から排出されるオーシストで原水が汚染され、水道水によるクリプトスポリジウム症の集団発生が世界各地で過去に発生しています。オーシストは塩素消毒では死滅しないため、現在ではオゾンや紫外線などによる消毒法の導入が進められているようです。牛舎の衛生管理をきちんと行うことは牛さんの健康を守るだけでなく、時に人の健康を守るために重要なことでもあるのです。 前の記事 第20話:寄生虫の話⑰ | 次の記事 第22話:寄生虫の話⑲ |