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松本大策のコラム
季の病

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2014年1月27日

 むかし(といっても共済獣医師をやってた頃です。あ、でももう20年くらい前か?早いですね。歳とるのって(涙))、出しゴロ馬(林業用の作業馬です)をかっていたベテランの馬屋さんから、「春先はキノビョウに気をつけんといかん!」と教わったことがあります。
 何のことか解らなかったので、親父さんに素直に聞いてみました。すると、その親父さんが言うには「冬場は馬を使わんじゃろ?それで、春になって急に外に出すと、血のション便をしてへたり込むのよ」と言うことでした。

 この症状は「麻痺性筋色素尿症」といいます。運動が少ない状態の牛や馬を、急に運動させることで、筋肉にいきなりたくさんの乳酸が発生して筋肉を傷めるので、筋肉に含まれる色素(ミオグロビンといいます。)が、オシッコに排泄されて血尿の様に赤い尿になります。色素は血液からではなく筋肉からですので、血尿ではなく「筋色素尿」と呼びます。

 経験からそういう病気を見つけている親父さんに感服しましたが、この病気は冬場、雪などで舎飼いをしていて、春先から放牧場に出す様な農場では発生する可能性もありますから、そろそろ昔の知恵を伝える立場として(やはり涙!)今回のコラムにしました。症状は、筋色素尿の他、発汗、体温上昇、心拍数および呼吸数の上昇などが見られます。

 治療は獣医さんに依頼して、副腎皮質ホルモン剤を主剤として、それぞれの牛さんに応じた対症療法を行ってもらいましょう。ただ、この病気に利尿剤を使うと余計症状がひどくなりますから、そこだけは注意が必要です。

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