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蓮沼浩のコラム
「第126話 「恐ろしい場所」」

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2009年3月19日

 獣医さんは色々な農場を往診に回るので牛床の状態も色々見ることが出来ます。今までのなかで一番強烈にひどかったのはとにかく下がズブズブのドロドロであり、牛さんを捕まえて治療するのも命がけの農場がありました。小生も色々と見てきましたが桁違いにすさまじいのです。もちろん長靴など一度踏み込んだら抜くことが非常に困難でありかろうじて中に牛糞が入り込まない状態。長靴が脱げてしまいバランスを崩し、目を瞑り断腸の思いで靴下のままズブズブの中を踏み込み、なおかつ尻餅をつき絶望のどん底に落ちたこともあります。あの時の足と尻の冷たさは忘れられません。おまけに牛さんを聴診しようとしたら体中全身にいわゆる「ヨロイ」がびっしりとついており、肺の音などまったく聴くことができません。わけもわからず治療して、靴下を脱ぎ、汚れを落としても当然一日中臭いは取れません。ふと振り返ると牛さんたちはまるで「沼にいるワニ」のように体の半分を沈めて座っているではないですか!!思わずジャングルにいるのかと錯覚しましたよ、ホント(笑)。夜家に帰ったときにカミさんも今までの人生で経験したことのない異種異様な異臭を放つ小生に度肝を抜かれていましたから相当臭かったのだろうと思います。このような貴重な経験をさせていただいたおかげでどんなに牛床がすさまじい農場を見ても驚くことはなくなりましたが、もちろんこのような状態が良いわけはありませんよね。やはり限度というものがあります。それにしても牛さんの環境適応能力には驚きです。
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