2014年1月21日 -大きく変貌した肉用牛繁殖農場の実践例- 農場HACCPに基づいて、良い方向に激変した肉用牛繁殖農場(A農場)のある例をご紹介しましょう。私が最初に訪れたA農場は、除糞が行き届いてない、牛舎の給水器の漏水の修理もしていない、牛舎通路にはホウキや一輪車がそのままの状態の農場でした。そして、痩せている牛が多すぎる状態で、その影響もあり繁殖障害は多く、また生まれた子牛は毎日、下痢や肺炎のために多く治療と、高い死亡率で経営的に非常に厳しい状態でした。
しかし、約1年半前にA農場は、経営者と基本方針が変わり大きく変貌しました(牛や建物、従業員はそのまま)。そこでA農場が始めに行ったのが、5Sの実践でした。5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ:従業員全員で、決められたルール・手順を正しく守る習慣をつける)のことです。そして、次に実施したのが病気(危害)の分析でした。どこで何の病気が入るのかを検査し、それを基に徹底的に議論し、治療中心であった「後手の獣医療」から、病気を起こさせない「予防的獣医療」に切り替えました。具体的には、毎日の牛舎内噴霧消毒、早期での5種混合呼吸器病ワクチン(2回)、ミコチルの予防的投与を開始し、農場入場者の制限と全牛舎で踏込槽消毒も実践しました。 その効果には、関係者が皆、驚きました。子牛の疾病率は約20分の1、繁殖母牛の空胎日数は約3分の1になり、経営的にも黒字に一変しました。また、殆どの従業員は「心に余裕が、できてきました」と語っています。 執筆者:九州獣医師HACCP研究会 事務局長 川邊久浩 前の記事 HACCP(ハッセップ)って何?(第2回) | 次の記事 HACCP(ハッセップ)って何?(第4回) |