2014年1月16日 病気あれこれなどと書くと、なんだか変な感じがしますが、小生が診療してきて印象に残っているものをこれから思いついた時に時々紹介してみようと思います。何かの時にほんの少しでも参考になればいいのですが・・・。 まずは繁殖牛の繊維球による腸閉塞。母牛の食欲が突然なくなります。熱も平熱で第一胃運動もやや弱くなっているけどあります。最初は普通の便をするのですが、時間がたつにつれて排便はなくなり、ひどい場合は便ではなく、かなりの量の膿が排泄されます。最初は肛門から膿がでてくるので何事かと思いました。脱水も徐々に進行していき、血液検査では低クロールが確認されます。何らかの通過障害をうたがうのですが、では何がその原因となっているのか?とにかく原因がはっきりと判明することがなく病理解剖で第四胃の中から卵のような繊維球が出てきました。そしてその中の一つが小腸に詰まっているという状態。その繊維を調べてみると、普段から与えているネピアグラスの繊維でした。ネピアグラスは毎年夏に収穫できるすすきのような草であり南九州や沖縄では結構使われています。収量も多く、管理が非常に楽な粗飼料ですが、幹の下部は非常に硬く、繊維もリグニン含量が多く牛さんが消化できません。その繊維が第四胃内で卵のような繊維球をつくってしまい、場合によっては腸閉塞を起こしてしまうのです。ネピアグラスを与えている農家さんはできる限り茎の下部は与えないようし、ネピアグラスをどっさりやるのではなく、他の粗飼料も合わせるなどの対応をとってみたほうがいいと思います。頭の片隅にこのようなこともあるのだとおぼえておいてくださいね。治療は内科的な治療が効かないときはすぐに外科的処置に入った方がよいです。繊維球が十二指腸にあるレベルであれば摘出することもできます。いかに早く診断できるかが勝負です。 前の記事 第360話:良し悪しは別として、間違いなく技術は進歩している | 次の記事 第362話:で、で、で、出た~~~ |