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数面麻子のコラム
第16話:寄生虫の話⑬

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2013年12月17日

 牛さんの皮膚から侵入して無事小腸までたどり着き、そこで成虫となった乳頭糞線虫は全員が卵を産みます。実は、牛さんの小腸にいるのはみんな雌なのです。では雄はどこにいるのでしょうか。
糞線虫類の最大の特徴は、有性生殖を行う自由生活世代と、単為生殖を行う寄生世代との世代交代がみられることです。
虫卵が孵化して感染幼虫となり、そのまま牛さんに感染する(直接感染)ものもいれば、感染幼虫にはならずそのまま4回の脱皮を繰り返して外の世界(自然環境下)で成虫となるものもいるのです。後者にはちゃんと雄と雌が存在し、交尾した後雌が卵を産みます。その卵が孵化して感染幼虫となったものが牛さんに感染するのです(間接感染)。
また、牛さんの腸内で孵化して感染幼虫となり、再び全身を移動し小腸へと寄生するものもいます(自家感染)。自家感染は線虫感染を重症化させたり、長期間牛さんの体内にとどまる原因になります。人間の例ではありますが、1人の人間に糞線虫が50年寄生していたという報告があるほどです。

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