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蓮沼浩のコラム
「第87話 「肥育牛の心音の基礎知識」」

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2008年6月5日

 さてまずは心臓の聴診のお話をするにあたって基本的なことをおさらいしておきましょう。最初に心臓の位置ですが第3〜第6肋骨の間の腹側にあります。心臓は体のほぼ真ん中にあるのですが心尖(しんせん)という心臓の先がわずかに後方左寄りを向いています。そのために心臓の聴診は左側の肘後から上腕と胸壁の間に聴診器を滑り込ませて行います。ここで注意しなくてはいけないことは牛さんが興奮すると心拍が異常にあがったり、やたらに音が強くなったりすることで正確に聴診することが出来ません。怖がらせないように声をかけてあげたりして診察しましょう。肥育牛の心拍数は安静時で大体80〜100回/分です。この心拍数が100回/分をこえてくると「瀕脈(ひんみゃく)」といいます。子牛の場合は心拍数が少し多く、120回/分を超えると「瀕脈」といわれています。これとは反対に心拍数が65回/分よりも少なくなると「徐脈(じょみゃく)」といいます。心臓のいわゆる「ドックン」という音は第1音と第2音の二つに分かれています。第1音は収縮期心音といわれ心筋の収縮運動と房室弁の閉鎖によって起こります。簡単にいえば「ドックン」のうちの「ドッ」のところが第1音になります。そして第2音は拡張期心音といわれ半月弁の閉鎖によって起こります。これは「クン」のところです。牛さんが大暴れして興奮したときや貧血などの病的状態のときにこの第1音が異常に強く聞こえることを「心悸亢進(しんきこうしん)」といいます。
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