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蓮沼浩のコラム
「第86話 「肥育牛の心音の聴診」」

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2008年5月29日

肺の聴診のお話が終わり、次は肥育牛の心音の聴診についてのお話しをしましょう。しかし実はあまり気が乗らないのですね。というのも今までの小生の経験則から心臓の聴診で雑音が聞き取れた場合はほとんどが予後不良の重症だからです。聴診器を心臓に当てて耳を澄ますと異常な音が聞こえる。おそらく心外膜炎だろうと診断をつけ、血液検査からもその可能性が非常に高いとわかる。さてそれでは治療しましょう・・・・といっても実は治療する手段が絶望的少ないのです(涙)。肥育牛の臨床現場では心臓外科はとてもじゃないですが出来ないのです。心音に異常な雑音が聞こえると判断がついた時点で実はもうどうしようもない状態になっていることがほとんどなのです。頚静脈が怒張して異常な拍動が見られ胸垂に浮腫などあるものならもう間違いなくアウトです。処置としても創傷性心外膜炎の治療としてパーネット8などの磁石を飲ませ、抗生物質と消炎剤を投与して様子をみるしかないのです。しかしそのような中にも何か参考になることがあるかもしれませんので次回から色々書いてみようと思います。
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