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蓮沼浩のコラム
「第83話 「気管の聴診」」

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2008年5月8日

今回から肥育牛の聴診についての具体的な説明をしてみようと思います。まず小生の場合聴診をするときは特別な場合を除いて基本的には最初に頚部の気管からスタートします。牛さんの呼吸数を調べる場合は安静にした常態で呼吸をしている胸部の動きを目視して数えますが、意外とこれはよく見ないとわかりにくい場合があります。しかし牛さんを落ち着かせた状態で聴診器を気管にあてると非常によく呼吸の状態がわかります。慣れてくると気管に聴診器をあてただけで大体の呼吸数はわかります。ここで呼吸の音が粗く、回数が多い場合の時などは熱発していることが多いですね。導入時の肥育牛の風邪などは体温の上昇はもちろんですが、鼻水、目の充血、目やに、咳、そしてこの気管の聴診で聞こえる音と呼吸数の増加はよく見る所見です。注意する点としてやはりラ音が聞こえるかという問題があります。気管の聴診で呼吸の音が粗くなり音が大きくなっている分には特に心配はしないのですが、少しでもラ音が聞こえた場合、いくら音が小さくても今までの小生の経験では結構重症肺炎が多いような気がします。よく耳を澄ますと気管の奥のほうから微かに「キイキイ」とか「ゼロゼロ」などと聞こえたら・・・・またしても気合を入れて肺炎の治療に突入です。ごくまれに咽喉頭部の膿瘍などの場合もありますが、とにかく気管の異常音はどれもこれも手ごわいので要注意です。
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