(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
「第81話 「”ラ音(らおん)”の思い出」」

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2008年4月24日

今回からは肺の聴診でよく獣医さんがいう「ラ音」について述べてみようと思います。小生がまだイノシシの骨しか知らない家畜解剖の学生だったころに大動物臨床実習で現場の獣医さんがノートに記録する「ラ音」という文字に非常に興味を覚えたことを思い出します。恐る恐る「先生、この“ラ音”ってなんですか?」と聞くと「ん?“ラ音”は“ラ音”だ!」というなんともよくわからん答えが返ってきました。別の先生は「ラ(+)」などと書いています。「“ラ”がプラスってどういうことよ??牛に“ラ”があるなんて聞いたことないぞ?」と当時は真剣に悩んでいました。聴診はしたことないし、肺炎もまったくよくわかっていない学生だったころの小生の謎でした。そして実際に獣医さんとなって現場でひどい肺炎の聴診をしたときに先輩獣医さんから「これが“ラ音”だ。」と教えてもらいました。その時は思わず感動して「やっとわかった!これが“ラ音”ですか、こりゃまたひどい音ですね。すごい肺炎だ!」と目を輝かせて興奮して言ったら、目の前にいた農家さんが非常にショックを受けている姿にハッとした記憶があります。その後、先輩獣医さんにどえらく怒られたのはいうまでもありません。実はこの「ラ音」は肺や気管支内の滲出物または、分泌物が気流によって振動する際の異常呼吸音のことを指す医学用語なのです。ちなみに「ラ音」の別名に「ラッセル音」というのがありますがこっちはドイツ語です。
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