(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
「第78話 「体温計を入れるときの思い」」

コラム一覧に戻る

2008年4月3日

 今回で体温計と体温のお話は最後です。そこで今回は小生がどのような思いで体温を測っているのかを紹介しましょう。小生は最初に治療する牛さんを見たとき、稟告と望診で実はなんとなく診断がついています。もちろん確実な診断というわけではないのですが、今までの経験からなんとな〜くわかる気がするのです。そして体温計を挿して基本的な診察を行う時に大体この牛さんは何度ぐらいの体温だろうなと大まかな判断を一瞬でしています。たとえば呼吸も速いし皮温も高い。おそらく41.0度ちかくは熱が出ているだろう、などなど。そして実際に体温を見ると40.8℃だったりして意外と予想に近い熱が出ている。このように小生の思いと体温が一致するときは特に気にしないのですが時々この思いと牛さんの体温が一致しないときがあります。このような時は非常に注意して診察するようにしています。元気なく座り込んでいて呼吸も少し速い。熱があると思っていたら平熱。あれ?おかしいなと思いよく診察してみたら実は尿石で尿閉を起こしていたなどということもありました。体温計は牛さんの体温というものを表現するだけではなく、診察するわれわれ獣医師にも気付きを与えてくれる心強い味方です。CTやエックス線などとは違い華やかさは微塵もなし。何故かいつも気がついたら牛糞まみれ。素朴で控えめで壊れやすく繊細だけど、そんなあなたに心から感謝しています。
|