今回から前編、後編にわけて体温計を上手に直腸に入れる技を紹介します。小生はこれらをうまく組み合わせて日々がんばっています。参考にならない確率大ですが何卒お付き合いください。
「差込(さしこみ)」
体温計を入れる基本テクニックである。尾根部と坐骨端の間から体温計をするりと直腸内へ入れる方法。普段一番多く使うやり方である。しかしこのやり方は肛門が尻尾に隠れて見えないので手探りで直腸内へ入れなくてはいけない。慣れると簡単に入れられるし、見た目もスマートなので必ずマスターしたい技である。
「尾上げ正面(おあげしょうめん)」
肛門の場所がよくわからず「差込」がうまくいかないときに使う技。片手で尻尾を持ち上げて肛門を目視して直腸内へ体温計を入れる。肛門が見えているので場所は確実にわかるのだが尻尾を持ち上げたときに牛さんが横に動き入れにくいときがある。最初から「尾上げ正面」でいくと正々堂々とした潔い感じを与える。
「横壁(よこかべ)」
牛さんの横に片足で立ち、持ち上げた足を牛さんの顔に近づけ、上体は尾方に傾けて直腸内へ体温計を差し込む。牛さんの横に壁を作るような感じで行う。お尻を左右に振る牛さんの時など重宝する技。しかし片足立ちでバランスが悪いので転倒には十分注意が必要。「横壁」から「差込」、「横壁」から「尾上げ正面」と連係させる。
「背掻き(せがき)」
牛さんの背中を掻くことで気持ちをそらし、その間に体温計を差し込む。結構暴れてしまう場合なども「背掻き」を使うとおとなしくなりスムーズにいくことが多い。注射をするときなどにも当然使える重要な技である。「横壁背掻き差込」は非常に雄大なスケールの技であり、かなり暴れる牛さんでも体温計を入れることが出来るので是非マスターしてほしいですね。
今回で前編は終了です。後編はもう少し高度な技を紹介します。最後に注意事項ですが、技の名称は正式な畜産用語でも獣医学用語でもなく小生が勝手に作った造語です。間違えても獣医さんに「先生、差込が駄目なら横壁で攻めてみてもいいんじゃないですか?」などといわないようにしてください(笑)。