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池田哲平のコラム
牛の解剖123:雌性生殖器(6)

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2013年9月20日

 卵管ロートに到達した卵子は卵管を通って子宮へと運ばれるのですが、この運ばれている途中で受精が起こります。卵子と精子は子宮で出会うと思っていた方もいるかもしれませんが、実際はそうではありません。卵管ロートから続く部分は卵管が太くなっている部分(卵管膨大部)と細くなっている部分(卵管狭部)と続いて子宮につながっていますが、卵子と精子が出会って受精がおこるのは卵管膨大部なんです。

 つまり、人工授精によって子宮内(牛同士の自然交配では膣内)に注入された精液中の精子はその場に留まっているのではなく、自らの力を使ってどんどん上流に上って行くんです。精子の体の大きさを考えたら、人だと10キロ近く走っていくことになります。結構大変ですよね・・・・・・。もちろん、こうやって厳しい状況を乗り越えさせることで、優秀な遺伝子の選抜が行われているのですが。

 また、卵子が下降してくるのを待つのではなく、精子が上流に移動していくのにはもう一つ理由があります。それは卵子の老化です。卵子が受精に適した状態を保てるのは10時間ほどしかなく、精子の受精能保有時間が24~48時間あるのに比べると非常に短いです。時間が経って老化した卵子は異常受精が起こり易く、そうなった場合、受精した胚は正常に発育しなくなる場合があります。

 こういった事情から、精子は卵子が降りてくるのを待つのではなく、自ら卵管にまでいって膨大部で卵子を待っているのです。

牛の解剖123:雌性生殖器(6)

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