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池田哲平のコラム
牛の解剖122:雌性生殖器(5)

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2013年9月13日

(2)卵管

 卵管は卵巣と子宮をつないでいて、卵子を子宮へと運ぶ器官ですが、ただ単純に2つを結びつけているだけではありません。

 卵管の卵巣側はロート状に広がっていて、その先端は正確には腹腔に開口しています。つまり、卵巣と卵管は直接的に管で繋がっているわけではないんですね。精巣と精管の関係とは違うところが大切です。
 じゃぁどうやって卵子は卵管を通って子宮に運ばれるのかというと、卵管のロート状の先端部は大きく膜状に広がって卵巣を包みこんでいて、卵巣の表面に存在 する主席卵胞が破れることで排卵した卵子を必ずキャッチするのです。キャッチされた卵子は膜の中をロートの根本まで運ばれ、無事、卵管に到達します。卵子 はここから子宮に運ばれていきます。

 この様に、卵巣は卵管の一部に包まれていて、卵子は包まれている膜にキャッチされないと、子宮まで運ばれません。人工受精などの際に、直腸検査であまりに 卵巣を触診しすぎると、この卵巣を包んでいる膜の部分が剥がれてしまって、せっかく排卵した卵子がキャッチされず、卵管に運ばれないので、結果的に受精も 受胎もしないということが起こる可能性があります。排卵前の卵巣(卵胞)を触診しすぎると、卵胞内に異常な圧力がかかって卵子が死滅したり、出血が起きた りする場合もあるので、発情期の卵巣の触診は慎重に行うか、可能であれば避けるべきです。

 発情はちゃんと来るのに種がつかない場合には、この様な原因も考える必要があります。

牛の解剖122:雌性生殖器(5)

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