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池田哲平のコラム
牛の解剖121:雌性生殖器(4)

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2013年9月6日

 今回は卵巣の中の卵胞についてお話します。少し難しいかも・・・・・・。

 前々回のコラムでも話しましたが、卵巣は卵子を排出し卵胞から雌性ホルモンを産生します。卵子は卵胞が成熟していく事で排卵されますが、最初から卵胞の中にそのまま入っているわけではありません。最初は大きさも機能もとても未熟な細胞(卵母細胞)として卵胞の中に入っていて、卵胞そのものも非常に小さな原始卵胞という形で存在します。1つの卵胞には複数の卵母細胞が入っていることもありますが、卵胞が発育してくる過程でいくつかの卵母細胞は死滅し、基本的には1つの卵母細胞だけが残ります。そして、原始卵胞が少しずつ成長するのに合わせて卵母細胞も成長し、卵子へとなるわけです。
しかし、この卵胞の数は出生前の時点で決まっていて、生まれてから数が増えることはないのです。発情時に排卵にまで至る卵胞は1つだけで、卵胞発育の競争に負けた他の卵胞は閉鎖し退行していきます。この様な卵胞の閉鎖・退行は性成熟する前でも起こっていて、出生後から初回発情が来る前でも卵胞はどんどん減っていっています。

 この様に、通常、卵胞は競争に勝った1つのみが主席卵胞にまで成長し排卵するのですが、本来であれば閉鎖・退行してしまう卵胞をホルモン剤を使って大きく育てる方法があります。この方法は、多くは受精卵を作出・回収する時に行われる処置ですが、一度の発情期にたくさんの卵子を排卵させ、そのタイミングで精液を注入すれば多くの受精卵が生まれ、効率よく受精卵を得ることができます。

牛の解剖121:雌性生殖器(4)

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