2013年8月9日 角突創、いわゆる“アタリ”と言われるものは、広い病気の分類では“血腫”に相当します。同居牛の角で突かれることによって、多くは側腹部に血腫が出来ます。大きいものでは直径50cmを超えるものもあります。逆に小さいものは生体ではわからないくらいのものもあり、出荷後の屠畜の際に発見され、損傷・出血が起きた筋肉などの軟部組織は食用にできないこともあります。その場合、枝肉は瑕疵扱いになり取引価格が下がるので、経済的損失は大きくなります。 そんな角突創ですが、たまに包皮炎や尿道破裂と見間違うような状態になる時があります。 角突が起こった直後、その局所において出血がおこり血腫となるのですが、血腫は血液中の細胞成分が中心に固まってできるので、液体成分はその場で体に吸収されるか、出血量が多い場合には重力に従って下に落ちてきます。包皮のある場所は、お腹が一番下に張り出している付近になるので、自然とその周辺に液体が溜まり、皮下浮腫を起こします。これが、パッと見ただけでは包皮炎や尿道破裂と見間違うくらいに腫れてしまう事もあります。 先日も農家さんが「尿石だ!尿道が破れとる!」とあわてて電話してきたことがありました。そのウシさんを診てみると顔つきは良いしエサも普通に食べていて、包皮に石も付いていないし炎症も起きていませんでした。そして、よくよく体の上の方を診てみるとアタリがあった、なんて事がありました。 血腫そのものは、内科的に(注射で)出血や局所の炎症を抑えても効果が乏しいこともあり、自然治癒を待つ事も多いのですが、血腫に伴う包皮周辺の皮下浮腫は消炎剤に投与によって1~2日でほとんど元通りになります。 前の記事 雄性生殖器の病気(2)―包皮炎― | 次の記事 牛の解剖118:雌性生殖器(1) |