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池田哲平のコラム
雄性生殖器の病気(2)―包皮炎―

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2013年8月2日

 包皮炎は、包皮に起こる細菌感染による化膿性炎で、育成~肥育のどのステージでも起こります。包皮に何らかの原因で傷ができ、そこに細菌が感染する事で炎症を引き起こします。傷ができる原因は様々ですが、よく遭遇するのは尿石症との併発です。排尿障害や排尿痛などの臨床症状を伴わない尿石症の場合でも、包皮に付随する陰毛に結石が数珠状に連なって付着しているケースでは、この結石によって包皮腔の上皮が損傷を受けて、そこから細菌感染が起こる事がよくあります。

 外見上、包皮周辺が炎症の程度に応じて腫れてくるので、去勢牛を飼っている農家さんでは日頃の牛の健康観察の部位の一つとして包皮をチェックされていればすぐに分かります。重症のケースでは包皮腔から排泄された膿や脱落・壊死した上皮が陰毛に絡んでいたりします。また、炎症がひどいケースでは全身性の発熱も伴うので、病気の状態に対応して食欲の低下見られます。「何かここ数日エサが少し余るんだよなぁ」と言うような感じで少しずつ食欲が落ちていて、よく見てみると包皮炎だった、なんて事もあります。

 治療は比較的シンプルで、抗生物質と消炎剤の全身投与を3~5日続けるだけでほぼ治まります。包皮は排尿によって常に尿にさらされている場所なので、傷が完全に元通り綺麗になるのにはある程度時間はかかりますが、感染している細菌を数日間の抗生物質投与によって死滅させれば、あとは自然と治癒に向かいます。陰毛に尿路結石が付着している場合は、それらが炎症を引き起こした真の原因でもあるので、必ず取り除きます。

雄性生殖器の病気(2)―包皮炎―

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