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池田哲平のコラム
雄性生殖器の病気(1)―陰嚢炎―

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2013年7月26日

 今回からは肥育の雄牛(去勢牛)で起きる生殖器の病気をいくつか見ていきたいと思います。まず一つ目は陰嚢炎です。

 陰嚢炎はその名の通り、陰嚢に起こる炎症を総称して呼びます。去勢の際の失宜によって起こることがほとんどで、俗に言う「タマが腫れた」状態のものを言いますが、その程度は様々です。菌感染は起こしていないが種々の程度の出血が起こり炎症がひどくなったものや、去勢の不手際で感染が起きて化膿したもの、またはその化膿した部分を生体反応として覆い隠そうとして増殖性の肉芽腫が出来てしまったもの、などなど。肉芽腫も、ピンポン玉くらいの大きさのものから、バレーボール大にまで腫れあがってしまったものなど、色々あります。もちろん、創部の汚染が重度であったものほど重症化しやすく、発育にも大きく影響します。

 無菌的な陰嚢炎や軽度の化膿性炎であれば、抗生物質と消炎剤の全身投与を数日行うことで良くなるケースがほとんどですが、肉芽腫が出来てしまったものは外科的に摘出しなければ完治は望めないものが多いです。小さいうちに気が付いて摘出できたものに関しては、予後も非常によく発育にもほとんど影響はないのですが、巨大化してしまったものは結構やっかいです。発見した時点で発育に影響が出ていることも多く(と言うよりも、餌食いがイマイチで発育が悪いという事でよくよく見てみると大きな肉芽腫性陰嚢炎があったという稟告も多い)、摘出したとしても手術による損耗も大きいので、食欲の回復に時間がかかる個体もいます。こういった症例では、とにかく最初からそのまま摘出を行うのではなく、内科的に抗生物質と消炎剤を数日投与して化膿巣をできる限り小さくしてから、外科的に摘出することが大切だと思っています。そうすることで、手術そのものも楽になりますし、牛にかかる負担も小さく出来ます。

雄性生殖器の病気(1)―陰嚢炎―

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