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舞子ぷらずま☆—今牛舎で読みたい本10選—第3回 |
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2013年7月16日
第3選:「十二国記」シリーズ小野不由美――「ぜったいに、負けない…」

第3選は、今月、6年ぶりとなる新作「丕緒(ひしょ)の鳥」が刊行された、未完の異世界ファンタジー「十二国記」シリーズ。表紙には美麗な女の子の挿絵つき。もともとはティーンズノベルの講談社ホワイトハートから出版されたシリーズです。
…まぁまぁまぁまぁ、そう言わずに(笑)。この前情報だけだと、読書家さんや男性陣はまったく食指が動かないと思いますが、異世界召還ファンタジーのなかでも、この「十二国記」の硬派ぶりは突出しています。シリーズ1作目となる「月の影 影の海」は、現代日本の内気な女子高生・陽子が突然異世界へ連れて行かれ、過酷な旅の果てに一国の王座へとつく物語。命を狙われ、裏切られ、孤独な葛藤が描かれる長い旅の道のりは、これがティーンズ文庫から出版されたとは信じられないシビアさ。上巻の壮絶な暗さは読み返すのがつらいほどです。王座を受け入れる陽子に、一国の民の命運を背負う重い使命が課されるラストでは、感動というより、生きる姿勢のようなものを自問せずにはいられない、ぐっと胆にくる読後感が味わえます。
新刊を待ち過ぎて、今から夢中で読み始められる人のことが正直羨ましい(笑)。
私の座右の書です。
「追い詰められて誰も親切にしてくれないから、だから人を拒絶していいのか。(略)絶対の善意でなければ、信じることができないのか。」(月の影 影の海)
「なんの努力もなしに与えられたものは、実はその値打ちぶんのことをあんたに要求してるもんだ。」(風の万里 黎明の空)
「自分の得たい答えを探すために考えるのじゃ、意味がない。」(図南の翼)
(つづく)
黒沢牧場 上芝舞子
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