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池田哲平のコラム
牛の解剖116:雄性生殖器(9)

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2013年7月5日

(8)陰茎
 陰茎は、尿道を包む形で体外にまで伸びる外部生殖器の一つです。体の正中で大腿部の間に存在し、外部生殖器とは言っても、常に外から見えることはなく、包皮の中に納まっています。種牛や去勢しない雄牛を所有している方でない限り、まず見ることはないでしょう。通常の肥育牛にされる去勢牛では精巣がないため男性ホルモンが分泌されず、その結果、陰茎を露出するような行動も起こりません。

 牛の陰茎は、人間と比較した場合、2つの点で特徴的だと言えます。1つは、常にある程度の硬さを持った“線維弾性型”の陰茎であるという事。もう一点は、“S状曲”と呼ばれる特徴的な構造がある事です。

 1つ目は陰茎のタイプ分けの話になるのですが、人や馬では海綿体と呼ばれる組織が豊富にあり、血液供給の多少で陰茎の硬さが変化する“筋海綿体型”というタイプです。一方、牛はこの海綿体というものは少なく、線維弾性組織と呼ばれる硬い組織が主体です。尿道バイパス手術の時には、この陰茎ごと尿道を切るのですが、陰茎を切る時の感覚はまさに太い靭帯や腱を切っている感じで“ジャリッ!!”というような感触があります。海綿体が少ないため、性的興奮により陰茎血流量が増えても、筋海綿体型の陰茎ほどは太さや長さや硬さに変化はありません。

 ではどうやって陰茎は包皮から露出してくるかというと、ここで2つ目の特徴であるS状曲が関わってくるのです。普段はS字に折りたたまれるように存在している陰茎ですが、これがまっすぐ伸びることで見かけ上の長さが変化し、陰茎が包皮から露出してくるのです。

牛の解剖116:雄性生殖器(9)

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