(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
池田哲平のコラム
休題 ―去勢あれこれ(4)―

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2013年6月28日

 以前、去勢の方法を色々と紹介しましたが、今日は一つまた別の方法をお話ししてみたいと思います。

 その方法とは、「Henderson Castration(ヘンダーソン去勢法)」と呼ばれる方法です。馬の去勢法として海外で行われていた方法ですが、現在では国内でも牛の去勢法として行っている獣医師の先生方や農家の方がいらっしゃいます(インターネットで調べると色々と見られます)。

 どういった方法かというと、観血去勢法の一つで、いわゆる「捻じ切り法」の一種です。精索部分を捻じ切ることで、止血をして精巣を除去するという方法になります。注意点としては、とにかくひたすら捻じる事です。決して引っ張ってはいけません。無理に引っ張ると、捻じった部分と違うところが切れて(多くは腹腔側)、出血が止まらなかったり、牛に強い痛みを与えたりすることに繋がります。

 シェパードでは伏見先生がこの方法を診療所内に紹介してくれて、これまで全国(全世界!?)の色々な先生が紹介している器具をヒントに、全てのいいとこを合わせて簡単に作れる器具を開発してくれました。さすがはシェパードのアイデアマンです!伏見先生のを見よう見まねで、私も自分で作ってみました。

休題 ―去勢あれこれ(4)―01

休題 ―去勢あれこれ(4)―_02

 先端のフック部分を精索に引っ掛けて、反対側を電動ドライバーにつなぎます。そして、最初はゆっくりと捻じっていき、徐々にスピードを上げて、自然と切れるまでとにかく回転し続けます。大体20~25回転くらいで捻じ切れる場合が多いです。
 調べていると、二つ同時に除去しているケースや、手回しで捻じっているケースもありますが、シェパードでは左右一つずつを電動ドライバーで除去しています。

休題 ―去勢あれこれ(4)―03

 この去勢法のメリットは、とにかく早くて清潔に安全に去勢が行える点です。捻じ切れる精索の部分はフックをかけた所よりお腹側なので、フックをかける際に精巣にしか触らずに行えば、お腹に残る部分には一切、手や器具がふれることはないので、汚染の危険性がほとんどありません。また、血管もしっかり捻じられて止血されるので、出血がなく安全です。多頭飼育をしていて去勢の数が非常に多い農家さんなどでは、非常にそのメリットを感じてもらえる去勢法だと思います。

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