2013年6月11日 8 育成牛の調査(鵡川町にて) 鵡川町は北海道内でも和牛の古い産地で、家畜市場でも評価が高い地域です。私は10年以上前に勤務していましたが、ここでの体験を通じ哺育中子牛へのスターター給与の重要性を、はっきり認識しました。 鵡川町の生産子牛は発育が良く、市場での販売価格は北海道でも常に一番の成績でした。どうしてそんなに発育が良かったのかを調べるために、鵡川とその近隣町村10戸の肉牛農家さんの飼養管理について、詳細に調べました。すると、鵡川町の農家さんは哺育中の子牛にきな粉味のする飼料(スターター)を、生後早くから給与していたことが分かりました。 この時の調査では、繁殖牛と子牛の飼養管理状況、子牛の発育調査(体重、体高、胸囲、腹囲)、血液を採取し分析(プロファイルテスト及び抗体価検査)するなど、その当時出来うる全ての調査を行いました。折り畳みの移動式体重計をライトバンに積んでいきましたが、百kg近い体重計の運搬で部下は腰を痛めるなど、文字通り身体を張っての仕事になりました。 そのおかげで、子牛は栄養を十分に満たしてあげることで発育が良好になることが分かりました。哺育中は母乳とスターター、離乳後は良質乾草と育成用配合飼料が重要な役割を果たします。調査した農家さんの中には、極めて栄養価の低い乾草を給与しているにも関わらず、育成配合飼料を十分に給与しなかったために、低栄養により子牛発育が標準を大きく下回っている方もおり、正しい飼養管理を助言した結果子牛発育が改善しました。 農家さんに応じた具体的助言と取組の結果を、2年にわたり詳細に観察することができ私自身の実践力が養われました。貴重な体験をさせてもらい、その結果は「繁殖牛・育成牛飼養管理の手引き これであなたも牛飼い名人」の冊子にまとめ肉牛農家さんに配布したり、研修会テキストとして活用しました。「経験が人を育てる」という言葉を実感した2年間でした。 つづく 根室農業改良普及センター 出雲 将之 前の記事 牛さんとわたし (出雲普及員のコラム4-7) | 次の記事 牛さんとわたし (出雲普及員のコラム4-9) |