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池田哲平のコラム
休題 ―去勢あれこれ(3)―

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2013年6月7日

―リング去勢法―
 リング去勢専用のゴム製のリングを専用の器具を使って広げ、陰嚢に装着することで、精索以下の組織(精巣、精巣上体、陰嚢)に血液が流れないようにし、それらを壊死・脱落させる方法です。他の去勢法と違って陰嚢ごとなくなるので、リング去勢をされた牛さんは見ただけですぐに分かります。大きくなった牛さんでは、その部分だけ見ると乳頭だけ見えるので、去勢牛なのかメス牛なのか分からない時もあります。
 リング去勢のポイントは私は2つあると思っています。1つは、両方の精巣をしっかり陰嚢内に落としてきてリングをはめること。もう1つは、なるべくお腹から遠いところ(陰嚢の下側の方)にリングをはめることです。リング去勢はゴムリングを陰嚢にはめるだけの簡単な作業なので、頭数が多い農場だと流れ作業でどんどんやっていく場合もありますが、陰嚢に精巣が2つあることを確認して行わなければ、1つでも精巣が残っていれば去勢はされず、オス牛として成長していくことになります。また、お腹に近い側にリングをはめると、その部位が化膿しやすい事が分かっています。リング去勢の際は、必ず精巣を陰嚢の下側に2つ引っ張ってきて、精巣の直上、つまり、なるべくお腹から遠いところにリングをかけなければいけません。
 リング去勢のメリットとしては、バルサックと同様に、誰もが簡単に出来るという事です。また、バルザックに比べて、処置後の食欲低下も起こりにくいと言われています。
 デメリットとしては、リングをかける場所が悪かったりすると、ごく稀に、精巣が陰嚢から腹腔側にツルっと逃げ出してしまい、去勢されずに精巣が生き残ってしまうということがあります。リングをかけて1ヶ月~1ヶ月半すると精巣や陰嚢は壊死・脱落するので、その後にでも、精巣がしっかり2つとも脱落しているかを、触診するなどして確認するのが確実だと思います。

休題 ―去勢あれこれ(3)―

休題 ―去勢あれこれ(1)―

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