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休題 ―去勢あれこれ(2)― |
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2013年5月31日
②非観血去勢
陰嚢を切開しないで去勢する方法を、非観血去勢といいます。
現在、一般的に行われている方法には、バルザック去勢法とリング去勢法の二つがあります。
―バルザック去勢法―
挫滅鋏(ざめつきょう)と言われる特別な道具を使って陰嚢の上から精索を挟み、血管を挫滅する(血管の組織を押しつぶして、血液が流れないようにする)ことによって、精巣への血液供給をストップさせ、精巣を萎縮・壊死させる方法です。バルザックで去勢された牛さんの陰嚢には、左右別々に特徴的な直線状の痕がつきます。ポイントは何と言っても、血管がちゃんと挫滅出来ているかどうかです。挫滅が不十分で血流が残ってしまうと、精巣は生き残ってしまうことがあります。
バルザックのメリットは、道具があれば誰もが簡単に出来るということでしょう。精索(陰嚢)をはさむというシンプルな方法なので、観血去勢のような煩雑な準備や手順がいらないというのは大きいです。
逆にデメリットとしては、去勢失宜が比較的起こりやすく、精巣が生きて残ることがあるということが挙げられます。バルザックでは精索を陰嚢の上から挟むので、本当に精索がしっかり挟めたか、しっかり血管が挫滅されたかを、直接目で見て確認する事が出来ません。子牛市場に出す前になって去勢できているかどうか確認したところ、挫滅が不十分で精巣が残っていた、ということもあり得ます。挫滅した直後では精巣は委縮しないので、手技の成否を確認するにもすぐには結果が分からないのが難点です。また、挫滅の際の痛みは、去勢を行ったその時だけでなく数日続く様で、個体によっては、長い間食欲の低下が見られます。

次回はリング去勢法を紹介したいと思います。
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