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蓮沼浩のコラム
「第12話 「 治らないがわかる?? 」」

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2006年11月27日

 何度も蛋白分画を調べて出荷した牛さんの状態をと場に確認しに行き、解剖検査を行った結果小生はひとつの結論に達しました。それは「蛋白文画のγグロブリンが高く(40%以上)、A/G比の低下(0.3以下なら完璧)、高蛋白血症の認められる牛さんは多くの場合現在の獣医学では治療が出来ないレベルの重症である。(治療費および小生の未熟な技術的問題もあるが)」というものでした。よく生きていましたね、というレベルの場合も多いのです。しかしこの治療しても完治する可能性が非常に難しいということが客観的にわかることが非常に重要なのです。γーグロブリンの増加は体内に起こっている激しい急性あるいは慢性の炎症性、化膿性、膿血性の病的機序の表現であり、体のどこに問題があるかは教えてくれないが、重大な問題が体のどこかに存在することを教えてくれます。診断名としても慢性化膿性肺炎、慢性化膿性腹膜炎、多くの創傷性化膿性疾患、慢性心内膜炎、多発性肝膿瘍などの重度の肝機能障害等などどれも超気合の入ったしびれるばかりの難病ばかり。臨床症状から見た経験則だけでなく、血液検査結果からも非常に予後が厳しいとはっきりわかると確定診断は難しいけど農家さんにインフォームド・コンセントを自信持って行えます。その後治療をどのようにしていくかは農家さんと十分に話し合えばよいことでEBMに少しは近づけるのではないでしょうか。
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