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牛さんとわたし (出雲普及員のコラム4-4)

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2013年5月14日

4 五代祖調査(釧路にて)

 釧路は酪農が基幹産業でしたが、達古武という地域に和牛経営を営む方が10戸近くおられました。和牛が盛んな地域ではなかったので、情報があまり入ってこず繁殖経営で苦戦していました。私は和牛登録審査員の資格を、全国和牛登録協会の上坂会長が講師の時に取得しました。上坂会長は当時、和牛の血統を赤丸、白丸、ハーフで区分する理論を提唱されていました。五代祖血統図を元に、本牛が肉質系か体積系かを判別し、それによって質量兼備の種牛生産する事につなげようというものでした。

 講習を受けた私は農協から登録証明書を借り、五代祖調査に取りかかりました。「和牛種雄牛系統的集大成」という全国の和牛の血統のことが詳細に書かれている本を手がかりに、数百頭の繁殖牛の血統を調べました。職場ではまとまった時間がとれなくて、正月休みに家で調べていたことを覚えています。

 数百頭の五代祖調査が終わりましたが、書面だけでは不十分と思い職場の仲間を駆り出して、本牛を1頭づつ見ながら私が作った五代祖血統図に、見た目の特徴を書き込む作業を行いました。1農家約30頭の繁殖牛を1日で調査するよう自分にノルマを課し、全頭の牛を見てその特徴を書いていきました。「中駆の伸びがある」「腿がうすい」など美点と欠点について、冬の寒い時期に手がかじかみながら、血統図に特徴を書いたことが思い出されます。(今なら部下にやらせますが)

 次はその血統図を元に、質量兼備となるような子牛が産まれるための種雄牛選びを行いました。いわゆる指定交配です。「森正」や「高栄」「長尾」などが全盛期の頃で、「安美金」が出た時にはモダン但馬としてずいぶん評価され、人気が出たため精液が入りづらかったように記憶しています。

 今になって思えば、この時の苦労が血統について知識を深めるきっかけになったと思います。手元にありませんが、「和牛種雄牛系統的集大成」は、使いすぎてボロボロになっていました。目標を持ちながら、時には集中して取り組むことが自らのスキルアップにつながることを教えられました。

牛さんとわたし (出雲普及員のコラム4-3)

つづく

根室農業改良普及センター 出雲 将之

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