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池田哲平のコラム
牛の解剖111:雄性生殖器(4)

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2013年4月26日

 現代型畜産の場合、オス牛では飼養管理のやり易さや肉質向上を目的として、去勢が行われるのが一般的だと思います。それは精巣の持つ2つの機能を抑制(除去)することが必要だからです。その2つの機能とは、1つは精子を作る事、もう1つは雄性ホルモン(テストステロン)を産生する事です。

 精巣の中がどういった構造になっているかを簡単に表したのが下の図になります。
牛の解剖111:雄性生殖器(4)

 1つ目の機能である精子がつくられるのは、精細管と呼ばれる細い管のなかです。精子は、ある一つの細胞が分化(細胞が形を変えたり機能が変化したりして、特殊化していくこと)していって作られます。つまり、最初は普通に丸い形をしていた細胞が変化して、皆さんのよく知っているあの頭に尻尾の生えた形へと変わっていくのです。出来あがった精子は、真ん中の精巣網と呼ばれるところに送られて、精巣から出ていきます。

 そして2つ目の機能の雄性ホルモン(テストステロン)の産生は、精細管の間(間質)を埋めている細胞の一つである、間質細胞と呼ばれる細胞で行われます。

 去勢を行う事による飼養管理上のメリットとしては、特に2つ目で紹介した雄性ホルモンの産生がなくなることで、オス特有の行動(乗駕や陰茎露出、ヒトへの攻撃性)が見られなくなる事や、肉質の柔軟性に大きな変化が現れる点が大きいと言われています。

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