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池田哲平のコラム
牛の解剖112:雄性生殖器(5)

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2013年5月10日

(3)精巣上体
 精巣上体は精巣にくっつく様に存在している、精巣と精管(精子が運ばれる管)をつなぐ硬い組織です。精巣上体は、解剖学的には頭・体・尾という3つの部分に分かれるとされているのですが、外見の上で頭や尻尾に見えるような特徴的な形の違いはまったくありません。

 精巣から精巣上体に移っていくところにおいて、精巣からは精巣輸出管という数本の管が出ています。この精巣輸出管は数本が1本にまとまって、そのあと、1本の精巣上体管というものになります。精巣上体の中は、この精巣上体管が非常に複雑かつ不規則に湾曲・迂回を繰り返して走行しているため、実際の精巣上体管の長さは外から見た精巣上体の数十倍はあると言われています。実際、数cmしかない精巣上体を精子が通過するのに、10日~15日もかかります。

 しかし、ここで注意しておかなければいけないのは、精巣から出来立てほやほやで送られてきた精子はまだまだ未熟な状態であり、自分自身で運動する能力もなければ、受精する能力も無いのです。こうした未成熟な精子たちは、精巣上体をゆっくり通過していく間に、運動能や受精能を獲得し、機能的に成熟していきます。成熟した精子は射精されるまでの間、精巣上体尾で蓄えられます。

牛の解剖112:雄性生殖器(5)

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