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池田哲平のコラム
牛の解剖110:雄性生殖器(3)

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2013年4月19日

(2)精巣
 陰嚢の中は陰嚢中隔という壁の様な仕切りがあって、左右の部屋に分かれていて、そこに左右一つずつ精巣と、それにくっついて存在する精巣上体が入っています(精巣上体については後日詳述)。

 しかし、精巣は最初から陰嚢の中にあるわけではありません。

 生まれた時の牛さんをよく見てもらえば分かるのですが、陰嚢は最初からあっても、精巣はその中に入ってはいません。生まれた直後の精巣は、陰嚢のすぐ上に存在し、いつでも降りてこられるようにスタンバイしている状態で留まっています。また、さらに時間をさかのぼって、お母さん牛のお腹の中にいる時を見てみると、精巣はお腹の中(正確には腎臓の後ろの方)で発生し、一定期間その場所に留まっていて、胎齢が進むにつれて、お腹の下の方に降りてきます。この一連の過程を獣医学用語で“精巣下降”と、何ともそのままな名前で呼びます。

 この精巣下降が上手く行われなかった場合、潜在精巣(または陰睾)と呼ばれる、先天的な病気として扱われます。精巣が降りてこないで留まっている場所は、お腹の中(腹腔内)か陰嚢の上部(鼠径部:そけいぶ)で、過去のあるデータでは、腹腔内が約75%、鼠径部が約22%、不明が約3%で、左右で見ると、左のみ降りてこないで残っている例が80%近くと多数の様です(田中ら、家畜診療、58、151-155(2011))。

牛の解剖110:雄性生殖器(3)

牛の解剖110:雄性生殖器(3)

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