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池田哲平のコラム
牛の解剖109:雄性生殖器(2)

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2013年4月12日

(1)陰嚢
 いわゆる“玉袋(たまぶくろ)”の事で、精巣が入っている袋になります(厳密には精巣+精巣上体)。陰嚢は、ウシでは足の間の頭側(膝の近く)にあって、体の表面から突出して存在します。そして実は、この体の表面から飛び出していていることが、とても大切なのです。
 陰嚢の中には精巣が入っていますが、精巣のメイン機能は精子を作る事です(詳細は精巣の説明時に)。しかし、精子が作られる過程というのは“温度”に大きく影響され、体の中心付近の温度(核心温度や深部体温という)では正常に進行しないか、造精機能はストップしてしまいます。そうなっては困るので、精巣が入るスペースは体の外に出して、温度を少し低く保っておかなければいけないのです。そういった事情から、陰嚢は体表面から少し飛び出して存在し、外気にさらされやすいようになっている訳なのです。

 そして陰嚢はただ外に出ているだけではなく、陰嚢自体も温度によって変化します。外気があまりに寒い時は、陰嚢を形成している膜(肉様膜(にくようまく))が温度変化を感じて収縮し、陰嚢を硬く小さくして、精巣を体側に引き寄せる様に働きます。こうする事で、精巣を適温に保っているという訳です。

 また、雄牛は子牛のころに去勢をされるので、肥育農家さんで見る牛の陰嚢には、その名残が残っていることが多いですね。くわしくは、また別の機会に紹介したいと思います。

牛の解剖109:雄性生殖器(2)_01

牛の解剖109:雄性生殖器(2)_02

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