(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
「生産性を阻害する要因(病気)を抑える (6−3)」

コラム一覧に戻る

2011年11月21日

− 第6章 ワクチンのお話し その3 −

 もう一つの注意というのは、妊娠中の母牛には、決して肺炎の生ワクチンを打ってはならない!ということです。どうしてかというと、生ワクチンに含まれる、生きた病原体(肺炎ワクチンの中ではBVD−MDウイルスと牛ヘルペスⅠ型ワクチン)が、母牛の胎盤を通って子牛に感染して、子牛の遺伝子の一部になってしまうのです。そうなると、遺伝子の一部ですから非自己ではなく「自己」つまりこれらのウイルスも自分の一部として認識されて、免疫の働きの中心である「自己と非自己の識別」が働かない、免疫不全牛となってしまうのです。ですから妊娠中の母牛に肺炎のワクチンを打つ場合には、ストックガード5のような不活化ワクチンを打つように指導しています。ただし、先にお話ししたように、不活化ワクチンですから分娩前2ヶ月と分娩前1ヶ月の2回打っていただくようにしています。メーカーさんは、1年目は2回必要ですが、2年目からはもう前の免疫が残っているので1回でかまいませんよ、とおっしゃって下さるのですが、年1産する保証はありませんから前回のワクチンからの間隔が伸びることも多いですし、ストレスや他の病気などの影響で免疫が途中で下がってしまっている事も懸念されるので、僕は毎年2回打ちにしていただいています。

|