− 第6章 ワクチンのお話し その1 −
そういうわけで、「まだ出会ったことはないけど、敵に回したらヤバイ!」という病原菌については、ワクチンという方法で敵の情報を与えて「抗体」を作らせるのです。ワクチンには、病原体や病原体の成分(抗原といいます)が含まれているので、これを注射してやるとマクロファージが巡回してきて「抗原提示(前回参照)」をしてBリンパ球に抗体を作らせます。しつこいようですが、「抗体」はオーダーメイドですから、ワクチンもそれぞれの病原体によって異なります。平たくいうと、大腸菌のワクチンは大腸菌の抗体しか作らせることが出来ないのです。みなさんの周りにも肺炎5種混とか、ストックガードとか異常産3種混合とか下痢5種混などいろんなワクチンがあるでしょ?それぞれのワクチンは、それぞれのワクチンに含まれる病原体の成分に対応した抗体しか作らせることが出来ません。
ワクチンも大きく2つの種類に分けられます。ひとつは、ワクチンに含まれる病原体を殺してあるもので、これを不活化ワクチンといいます。もう一つは、ワクチンに含まれる病原体を悪さが出来ないくらいに弱らせてあるもので、こちらは「生ワクチン」とか「弱毒生ワクチン」といいます。不活化ワクチンでは、病原体が死んでいるのでワクチンを打たれた牛さんの免疫系の働きで、ワクチン成分が早めに除去されます。本当は抗原(病原体)が長く体内にとどまるほど、抗体もたくさん作ることが出来て有利です。しかし、不活化ワクチンは抗原が体内にとどまる時間が短いので1回の注射では十分な抗体を作らせることが出来ません。ですから2〜4週間間隔で2回接種しなければならないのです。