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松本大策のコラム
「生産性を阻害する要因(病気)を抑える (3−1)」

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2011年7月25日

第3章−感染症に対する武器 その1−

 さて前回は、病原体のいろいろについてお話ししましたが、それぞれの病原体によって、効果がある薬剤が異なります。みなさんが感染症の際によく耳にするのは「抗生物質」というお薬だと思います。最初の抗生物質というのは、青カビから発見されたペニシリンだというお話しはご存じの方も多いかと思います。このように抗生物質というのは、カビや細菌が他の細菌をやっつけるために作り出す物質です。先ほどお話ししたペニシリンの他に、結核の特効薬だったストレプトマイシンや現在は動物にはしようが認められていないクロラムフェニコール(いわゆるクロマイ)、飼料添加などにも使われるOTC(オキシテトレサイクリン)やCTC(クロルテトラサイクリン)などがあります。いろいろな細菌がいますが、それぞれに効果のある抗生物質が異なります。ですから、抗菌範囲のなるべく広い抗生物質や、自分の農場や周辺の農場で効果のある抗生物質を選ぶのです。

 厳密には、細菌やカビが作らない(人間が化学的に合成した)もので悪玉菌を殺したり抑えたりする薬剤は、正式には「合成抗菌剤」といって抗生物質と区別されるのです。合成抗菌剤の仲間にはバイトリルなどのニューキノロン系やエクテシン液などのSO合剤と呼ばれるものなどがあります。こんなのは別に覚える必要はありません。どこかのタレントの色恋話と同じレベルで聞き流してけっこうです。どうせ時間つぶしなら、こっちの方が役に立つでしょ?抗生物質を使用する際、注意しなければならない事があります。それは、通常3日以上続けて同じ抗生物質を使い続けない(重症の場合は5日くらいまで連続使用します)、ということです。なぜかというと、同じ抗生物質をダラダラ使い続けると、細菌もバカじゃありませんから「耐性」を獲得していくのです。耐性というのは、酵素などを作り出して抗生物質を分解したり、抗生物質を取り込まなくする仕組みを作り出したりして、抗生物質を聞かなくする働きです。いまは様々な耐性菌が問題になっています。注意して使えば抗生物質の寿命を延ばすことが出来ます。

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