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松本大策のコラム
「生産性を阻害する要因(病気)を抑える (2−4)」

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2011年7月11日

第2章−感染症の病原体 その4−

 それから、忘れてはならない病原体が寄生虫です。我が国では衛生環境が高いので、寄生虫病は過去のもののような感じがしますが、実際世界中の病気の75%、じつに3/4は寄生虫病なのです。また牛さんなどの家畜では、人間様ほど衛生環境が良くないので、未だに大きな問題となっています。
 一口に寄生虫といっても大きく分けて吸虫、線虫、条虫、原虫等に分けられます。牛さんでは、新しいイナワラから感染する肝蛭などが吸虫の仲間ですし、赤ちゃん子牛の初期発育を低下させるクーペリアや育成期から肥育期の発育を遅らせるオステルターグ胃虫、肺炎の原因やポックリ病の原因になる乳頭糞線虫などが線虫の仲間です。牛さんではあまり話題になりませんが、他の動物では真田紐のような平たいヒモ状の長い虫、条虫というヤツもいます。牛さんにもいるのですが、病原性がないためさほど問題にされません。

 さて、最後の「原虫」というものは他の寄生虫に比べてとても小さいので肉眼では見えません。いわゆるコクシジウムやクリプトスポリジウムもこの仲間です。人間でいうとマラリアなども原虫の仲間です。病原性の強さでは定評があります。発育の仕方も牛さんの体の中で2回サナギを作ったり、とかなり変わっています。
 ただ、牛さんの胃袋の中には、第一胃でがんばって牛さんのために働いて、コリン(ビタミンの仲間)や揮発性脂肪酸(牛さんのエネルギー源)などを作ってくれる、いわゆる善玉の原虫もいるのです。これらは大型原虫のプロトゾアという仲間です。肥育の上手な農家さんでは、導入期にしっかりと腹作りをして善玉の原虫も一杯増やしているのです。
 線虫と条虫、原虫では同じ寄生虫とはいえ駆虫薬が異なります。これについては、後の感染症に対する武器でお話ししようと思います。
(つづく)

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