第2章−感染症の病原体 その2 −
ウイルスは、遺伝子と遺伝子を保護する殻だけで出来ていて、単独では増えることも出来ませんし、生命活動(息をするとか食べ物を食べるとか、動き回るとか)も一切出来ません。生き物なのかどうかもはっきり解っていないのです。科学者によっては物質だという人もいます。生き物ではないとしたら自分では生命活動が出来ません。そこで他の動物の細胞にとりついて、その細胞の生きるために必要な仕組み(タンパク質を作るとか酵素の働きとか)を乗っ取って増殖し、やがてとりついた細胞を破壊して外界に出てくるのです。感染する場所によって、感染した動物にいろんな不都合をおよぼします。肺の細胞に感染したら肺が壊されます(いわゆる肺炎です)し、腸にとりつけば下痢などの腸炎が起こるわけです。
つぎに細菌のなかま。こちらもたくさんの種類がありますが、ウイルスとの決定的な違いは、細菌は酵素系や呼吸系(といっても人間みたいに肺とかがある訳じゃありません。取り込んだ酸素を使ってエネルギーを作り出す仕組みのことです)などを持った「生き物」なのです。ですから大きさもウイルスよりかなり大きいです。
食中毒の原因として有名なサルモネラ菌やウェルシュ菌(動物では同じ細菌をクロストリジウム・パーフリンゲンスと呼びます)、それから大腸菌なども細菌ですし、肺炎を悪化させるパスツレラ菌、マンヘミア菌、脳炎を起こすヘモフィルス菌や化膿症を起こすアクチノバチルスやアクチノミセス菌、悪名高き炭疽菌なども細菌の仲間です。染色液で染めてみて、染まり具合で細菌を分類して、大きくグラム陰性菌とグラム陽性菌に分けます。大腸菌やサルモネラ菌はグラム陰性菌、炭疽菌とか化膿菌であるブドウ球菌などはグラム陽性菌の仲間です。
(つづく)