第1章− 巻頭言 その3 −
感染症の原因を考える場合、まず病原体のことが思い浮かぶのではないかと思います。もちろん感染症なのですから、ウイルスや細菌などの病原体は重要な原因です。肺炎の場合はウイルスや細菌に加えて「マイコプラズマ」という小型のバイ菌みたいなのも重要な病原体ですし、腸炎の場合はコクシジウムという原虫が大きな原因となります。また、肺炎にしろ腸炎にしろ線虫という寄生虫が関わっているケースもあります。ですから確かに病原体は無視できません。
しかし、私たちが病気の原因を考えるときは、病原体についてだけでは不十分です。というのも病原体は感染する側、サッカーにたとえて言うと攻撃側です。これに対して、牛さんの身体の抵抗力、つまり免疫とか粘膜のバイ菌進入阻止の仕組みなどは、防御(ディフェンス)側にあたります。攻撃があったとしても、ディフェンスがしっかりしてれば得点(病気で言えば感染・発症)には至りません。ですから、感染症の原因のもう一方は「防御能力の低下」とも言えるのです。ですから身体の側、つまり免疫や粘膜の機能を高めておくことは、病気を予防するためには極めて大切なことなのです。
病原体の話も牛さんの抵抗力の話もどちらも同様に大切なことですから、次の項では、まず病気の総論として病原体のお話しを中心にして、その後ディフェンス側のお薬のお話し、そして粘膜の機能や免疫などの抵抗力のお話しの順で一緒に考えていきましょう。(つづく)