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松本大策のコラム
「マイコプラズマで気になっていること(その3)」

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2011年4月18日

〜 マイコプラズマって何だ?(2)〜

 マイコプラズマの特徴はこれだけではありません。バイ菌が体内に入ってきたときに戦う免疫細胞に白血球がありますが、マイコプラズマは白血球の働きを弱めてしまうのです。いわゆる免疫抑制ですから、エイズのように身体が抵抗力を失ってしまう(エイズほど顕著ではありませんが)のです。そうなると他のバイ菌が2次感染を起こしやすくなって、中耳炎や肺炎などの症状がよけいに悪化してしまいます。
 また一般の細菌やウイルスをやっつけるために身体は「免疫抗体」というものを作ります。この免疫抗体というのは、いわばタンパク質で作った「その病原体特注の檻」です。それぞれの病原体の形にぴったり合わせて作られます。しかし、マイコプラズマは形をしょっちゅう変えてしまう(正確に言うと表面抗原を変化させる、といいます)ので、マイコプラズマにぴったりの檻を作るのが難しく、なかなか閉じこめることができません。その上、前回お話ししたように、効果のある抗生物質はかなり限定されていますし、効果があるとされている抗生物質にもかなりのマイコプラズマは耐性を持ってきています。つまり効果がなくなってきているのです。
 「それじゃあ、防ぐのは至難の業じゃないか」といわれそうですが、マイコプラズマにも弱点はあります。それは「消毒に弱い」ということです。前回お話ししましたように、マイコプラズマは細胞壁を持っていませんから、一般の細菌以上に消毒には弱いのです。ですから、マイコプラズマをやっつけるには、「早期発見による徹底治療」に加えて、徹底的な消毒による蔓延の防止が必要になります。
 とはいうものの、なかなか消毒できない場所があるのです。それは、また次回に詳しくお話ししましょう。

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