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池田哲平のコラム
尿石症を考える(26)

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2013年1月11日

 尿道バイパス手術の術後の管理として、自力排尿しない時にバイパスした尿道が詰まっていた場合は、これまでに話した様な手順で処置をしたり術後管理を行っていきます。では術後の自力排尿がおもわしくない場合で、バイパスした尿道が詰まっていなかった時は、どの様な原因が考えられるでしょうか?

 まず、直腸検査で膀胱が張っているのを確認できるのであれば、膀胱麻痺を起していることが一番考えられます。これは、膀胱に尿が長く溜まり続けていたために膀胱が必要以上に大きく膨らんでしまい、自分で縮む力がなくなってしまっている状態です。つまり、膀胱を縮める筋肉が働かなくなってしまっているんです。これは、重度の膀胱炎を起こしている場合にも起こる事があります。こう言った時は、バイパスした尿道からカテーテルを挿入して溜まっている尿を排尿させ、さらにこのカテーテルを抜かずに留置します。単純な膀胱麻痺であれば、2-3日カテーテルを留置しておいて膀胱が必要以上に拡張しない状態にしておくことで、膀胱は再び収縮力を取り戻します。膀胱炎がある場合は、前回までに紹介した方法と併せて、カテーテルから膀胱内を洗浄する方法も有効だと思います。
 ここで注意しなければいけないのは、“必要以上に長い期間カテーテルを留置しない事”です。あまり長い間カテーテルを留置していると、留置しているカテーテルの先端が膀胱をチクチク刺激する事によって膀胱炎を引き起こしてしまったり、カテーテルを通している尿道に炎症や浮腫が起きてしまったりするので、注意が必要です。

尿石症を考える(26)

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