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NO.216:牛の病気―頭部―(3) |
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2013年1月9日
3、角折れ
原因
角への強い衝撃により角を覆う角質の鞘が抜け、同時に前頭骨角突起(角)が折れる。
角鞘脱と同様に、柵から勢いよく頭部を引っ込めた時に強打しがち。
症状
角鞘脱に順ずる。
但し、骨折するためより激しい出血と強い疼痛を伴い、特に成牛では深刻な食欲の低下が見られることもある。
農家さんができる処置
状態を確認し、先端の軽度骨折であったり出血が激しくない時には角鞘脱と同じ処置を行う。
角が縦裂していたり根元付近で骨折していた場合、またはおびただしい出血がある時には除角の実施も勧められる。判断に迷う時には獣医師の判断を仰ぐ。
獣医師の治療
農家さん自身で処置、除角を行うことが困難であれば、代わりに行う。
重篤な骨折であった場合、長く強い疼痛とともに細菌感染のリスクが増す。従って、汚染が重度である場合には、そのまま止血処置を行うと感染を閉じ込めてしまう可能性があるので、積極的に除角を実施する。
成牛である場合、徐角により前頭洞が開口し感染する可能性が高い、また徐角自体の痛みとストレスから食欲の低下が見られることがあるということを畜主にインフォームし、除角の是非を柔軟に判断する。
予後
感染なく適切な処置が行われれば治癒は早く、以後の生産性にも影響はない。
前頭洞への感染があった場合、感染が除かれ肉芽により空洞が埋まるまで受傷から1月以上を要することが多く、その間の飼料摂取量、増体に影響が出る可能性が高い。
特に成牛では影響が大きい。

写真①
角が縦裂した牛

写真②
角の先端が骨折しその状態で固まり成長した牛

写真③
角折れ後除角し、その後化膿してセカンド・オピニオンで診療した牛
化膿が見られる場合には、かさぶたは速やかに取り去り、ドレーンを第一に優先する

写真④
同牛の10日後
表層の化膿は強いが、肉芽の造成が進み腔が埋まってきている
その後完全に埋まり、治癒した
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