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伏見康生のコラム
NO.215:牛の病気―頭部―(2)

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2012年12月26日

2、角損傷

角損傷は大きく分けて3つの病態に分類できる。

1,角鞘脱
いわゆる脱角、サヤ抜けの状態。
著しい出血を伴う。

2,角折れ
角が骨折した状態。鞘抜けを伴うことが多い。
著しい出血と共に、長く強い疼痛を伴う。

3,頭蓋骨骨折
角の基部、前頭骨が骨折した状態。
外観上出血などを認めることはなく、軽度であれば気がつかないこともある。
精査すると患側角の動揺を認め、同側の鼻腔より出血が認められることがあり、長く強い疼痛を伴う。

1,角鞘脱
原因

角への強い衝撃により、角を覆う角質の鞘が抜ける。
特に柵から頭を出している牛が、驚いて勢いよく引っ込めた時に柵へ強打しがち。

症状
完全に抜け落ちるもの、頭部の皮膚と一部分で繋がった状態のものがあるが、いずれも著しい出血を伴う。
受傷牛は疼痛及び出血により興奮状態となり、同居牛も出血に興奮状態となる。
疼痛のため、頭部の接触を怖がるようになるが治癒と共に軽減する。

農家さんができる処置
生命に関わるほどの出血は起こらないと思われるが、3mm以上の幅広のゴムを用意し両角の根元を8の字を描くようにゴムを掛けると迅速に止血される。
この掛け方で著しい出血が続くようであればしっかりと角の根元にゴムが掛かっていない可能性が高いのでゴムの本数を増やすもしくは掛け直す。
髪結いゴムやタイヤのチューブでも代替可能であるが、普通の輪ゴムではうまくいかない。
鞘の一部が皮膚とつながりパカパカと浮いた状態では以後の処置が行いにくいうえ感染の危険性が高いため、剪定バサミにて根元から切り離す。
一般的な巻き包帯(7cm×9m)を用いて、受傷角が完全に覆われるように健常角とともに8の字を描くように巻く。
消毒のため、ヨードチンキをたっぷりと包帯に吹きかける。
半日ほどで止血用のゴムを切る。切り忘れると頭部へ喰い込み化膿する。
翌日、包帯が乾燥していることを確認したうえで両角の中央部で包帯を切る。受傷部の包帯はカサブタの役割を果たし、時間と共に自然と脱落し治癒して行く。

受傷直後、牛によっては頭部への衝撃を恐れ餌槽へ顔を出したがらない子もいるため、必要に応じて牛房内でも餌を食べられるようにするなどのケアを行う。

母牛群では汚染血液から白血病伝播の可能性が否定できないため、速やかに畜舎に残った血液の洗浄を行うことが好ましい。

獣医師の治療
農家さん自身で上記処置を行うことが困難であれば、代わりに行う。

予後
当日のうちに止血でき痛みもすぐに取れる。

NO.215:牛の病気(2)―頭部―

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