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伏見康生のコラム
NO.214:牛の病気―頭部―(1)

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2012年12月19日

1、外傷性角結膜炎

原因
同居牛の角突によることが多い。

症状
受傷初期には眼球、結膜の充血、流涙、角膜の白濁が見られる。
後期には角膜に血管の新生が起こり、中央に赤色の肉芽が形成される。
治癒期には角膜全体の白濁、中心性の白斑(星と呼ぶことも)が残ることがある。
視力の有無は受傷の程度に左右される。

農家さんができる処置
糞便、敷料等による眼球の汚れがある場合には速やかに流水で除去する。(生理食塩水があればなおよい)
受傷後、患側は視力がほぼ無い状態となるため、当該牛と同居牛を隔離や係留するなどして事故の連鎖を防ぐ。
事故は餌槽での頭突きによるものが多いため、群内での順位と相性を考慮し部屋割りする。

獣医師の治療
初期には受傷部の感染を考慮し、ペニシリン、オキシテトラサイクリンなどの抗生物質点眼を行う。
角膜潰瘍へのステロイド使用は原則禁忌とされるが、潰瘍の重症度、感染の有無から判断し適宜ステロイドの点眼を行うことで治癒が早まる。
受傷初期の対応を適切に行い感染がなければ、以後は牛の自然治癒に任せる。

予後
失明に至った場合、相応の不自由はあるが生産性の大きな損失は無く、繁殖用、肥育用として以後の飼育が可能。

NO.214:牛の病気(1)―頭部―01

①受傷当日の牛
眼球の充出血、角膜の白濁が見られ、眼周囲、まつ毛は涙で濡れている。
痛みから眼瞼はやや閉じられている。

NO.214:牛の病気(1)―頭部―02

②3週間後の同牛
角膜に中心性肉芽増生と全体に軽度白濁、血管の新生が見られる。
威嚇への反応が見られ、視力は有している。

つづく

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