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池田哲平のコラム
休題 ―薬剤の体外排泄―

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2012年12月28日

 薬剤(薬物)は体の中に入ってきてその有効成分が特定の効果を発揮しますが、いつまでも体の中に留まっていてくれては困ります。つまり、体の中で薬効がない別の物質に変えられて(代謝されて)、そして体の外に出される(排泄される)必要があります。この時、排泄される経路というのはその物質ごとに決まっていて、しかも代謝を受けないで薬効が残っている状態のまま排泄される物質も多いです。体外に排泄さえる経路としては、尿(おしっこに混ざって外に出される)と胆汁(便に混ざって外に出される)がメインですが、他にも呼気(吐く息に混ざって外に出される)や乳汁(母乳に混ざって外に出される)などがあります。
 
 膀胱炎などの尿路に細菌感染が起きている病気の時は、尿路排泄される抗生物質を使用することで、感染が起きている個所に効率よく薬剤が行き届くので、病気の治りがいいです。代表的な抗生物質としては、ペニシリンやアンピシリンといったペニシリン系抗生物質、エンロフロキサシンやオルビフロキサシンといったニューキノロン系抗生物質がこれに当たります。これらは大部分が代謝されずに排泄されるので、排泄経路である尿中には抗生物質の有効成分がそのまま残ることになります。つまり、筋肉注射などによって全身的に抗生物質を投与することで、尿路を抗生物質で直接洗浄するような効果が得られます。なので、膀胱炎などの泌尿器系の細菌感染症には、上記のような尿路排泄される抗生物質を使用することが有効なのです。

休題 ―薬剤の体外排泄―

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