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松本大策のコラム
「系統ごとの肥育方法 その3」

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2010年12月13日


 もう少し詳しくお話ししましょう。牛さんは、第一胃で食べたもののうち、炭水化物をエネルギー源にします。タンパク質は身体の素材にするのですが、ここではまずエネルギーのお話しをしましょう。
 炭水化物は吸収する孔の大きさよりも粒(分子量)が大きいので、そのままでは吸収できません。ですから人間の場合は、小腸の酵素で消化して小さな粒であるブドウ糖(お砂糖の仲間でもっとも粒が小さい)にして、小腸から吸収します。牛さんの場合は、第一胃で発酵消化(微生物の働きで分解すること)して「お酢の仲間(揮発性脂肪酸といいます)にして、第一胃の粘膜から吸収するのです。
 ですから、第一胃でお酢の仲間がいっぱいできて、ぐんぐん吸収すれば、牛さんはエネルギーいっぱいになって、余ったエネルギーはサシになるというわけです。ここで、大型の気高系などは、第一位で「お酢」を吸収する速度が速いので、発酵速度が早く「お酢」がガンガンできる餌を使ってあげると、ガンガン作ったお酢をぐんぐん吸収して発育もいいしサシも入るのです。しかし、小型の肉質タイプの牛さんは、第一胃の「お酢」の吸収速度が遅いので、じわじわとお酢が作られた方が第一胃の吸収速度が遅いので、第一胃に負担をかけません。もしも気高系のような発酵速度の速い餌を使うと、「お酢」がガンガンできても、吸収する速度は遅いので、第一胃の中にお酢がたまって第一胃の胃酸過多になってしまうのです。
 第一胃が胃酸過多になってしまうと、酸に弱い菌が死滅して乳酸菌のような酸に強い菌が増えてきます。そうなると、さらに強いお酢である乳酸がたまってきて「ルーメンアシドーシス」という状態に陥ってしまうのです。このルーメンアシドーシスは、肥育牛の代謝病の中で大きな原因となる怖い状態です。(つづく)
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